巣箱のペンダント製作記

桜も散りつつある朝、鳥が鳴くのを聞いているうちに、そうだ!巣箱を作ってやろうと思い立ちましたのが吉日というものでございます。このところKum-Bouづいていて、なんとかこれを適用しようという頭が強すぎてモノそのものへのアイデアが枯渇状況です。

汚い絵を描いてから、型紙を作ります。型紙と言ったってグラフ用紙に物差しで線を引くだけのこと。

 <グラフ用紙への展開図下書き>

屋根の勾配と留め金具、全体のイメージをちょこちょこやる。この下へカーボン紙をしき込み、さらにその下に銀の板を置いて、上からボールペンでキチンとなぞれば銀板に型紙で書いた線が転写されます。真面目にやるためには、いきなりグラフ用紙から銀板に転写するのではなく、トレーシング・ぺーパーに転写してから銀板に転写するのが正しいと思います。これは銀板の無駄使いを避けるとともに、正確なトレースをするためです。

 <金切りハサミで切った状態の銀板>

銀板の厚さは0.8mmですが、もっと薄くても大丈夫でしょう。強度的に問題ない限り薄い方が切り出しの作業は楽なはずですけど、持ったときの重さなど色々考え出すとキリがないですね。この程度の板なら金切りハサミで切るのが楽だし、精度も高い。糸鋸だといくら上達した手練の技でも、完璧な直線に切るのは結構難しく、後の手間がうんと違ってくるからです。

折り曲げるところは、ヤスリなどで薄くして曲げやすく加工しておくことが大事です。折ると千切れてしまうか!と不安になるくらいまでヤスッておくと、コーナーが美しい立体箱となります。折り曲げた後は、コーナーの隙間などをなくすためと、曲げ加工した部分の強度を補完するために、2分ロウを流しておきます。空が隙間から見えるなどないように。2分ロウともなると銀の含有率が高いので後でヤスリを掛けてもロウ目などは見えません。それに最初のロウ付け工程ほど溶融温度の高いロウを使うのは常識です。

 <折り曲げてコーナーをロウ付けした状態の本体>

巣箱の表の板は雰囲気を出すために、木目金を使うことにしました。本体と同じ厚さまでローラーで圧延して薄くしておきます。

 <木目金へのパターンニングはまたいずれ>

巣箱の穴って、案外と上の方についているものです。ポンチを打って穴を開けてしまう前に穴の大きさを決めて、コンパスで円をケガいて置くことをお勧めします。そうしないと、あれ?!糸鋸を通す穴はあいたけど、どれくらいの穴をあけるのだっけ?ということになってウロが来ます。

 <あらかじめ、どこへ本体が乗るかをキメてロウを付ける>

巣穴を開けたら裏返して、三分ロウを付けておきます。本体をロウ付けするための準備工程です。本体との接合部分は後でヤスリを掛ける所ですから、たっぷりロウを付けて構いません。

ロウ付けする前に、本体と巣箱の表になる木目金との間に隙間がなるべく出来ないようにヤスリを掛けたりしますが、どうしても板が曲がっているものです。で、相互がカッチリと接合して隙間が出来ないように、”からげ線(細い鉄の線)で圧力が掛かるように結びます。 これがうまく機能すれば、表の板と巣箱本体の間にロウが綺麗に流れて隙間をなくします。ただし、ロウ付け直後、カラゲたまま酢洗い(希硫酸液につけて不純物を除去することを言います)をしますと、銀に鉄分が固着して取り除くのに手間が掛かるので、ロウ付けが済んだら、からげ線をニッパーやピンセットで取り外してから酢洗いします。

ロウ付けして、酢洗いを済ませた後、表板となる木目金の不要な部分を糸鋸で切り落とします。さらに、この段階で本体の外壁となる部分をキッチリとヤスリ掛けしなければなりません。屋根を付けてしまってからでは、効率よく研磨作業をすることが出来ないからです。こんな具合にモノによって、作業の工程を考えながらしかるべきステップでヤスリを掛けるなど後の工程では出来ないことを済ませておくことが綺麗な仕上がりとするためには欠かせません。

本体外側の研磨を行い、屋根が乗る部分の勾配を一定に研磨しておき、今度は屋根の細工です。色々考えられますが、ここでは銀板を荒した上に鳥の足跡の刻印をタガネで打って、それらしさをかもし出そうというわけです。屋根を5分ロウで付けますが、これは表板を本体に接合したときと全く同じ手法で、屋根の方に5分ロウを前もって付けておいてから、その上に本体をさかさまにおいて加熱接着したところです。次に革紐を通す輪環を作って早ロウで留めておきます。

仕上がり一歩手前まで出来上がった巣箱1号。右上は同時並行的に製作していった巣箱2号とのTwo Shot。基本デザインは共通ですけど、屋根のあしらいと巣穴の周辺の手当てが凝っています。 

赤銅や木目金の部分は細部に渡って炭で研ぎ、重曹で油分を除去したあと、大根おろしに漬け込んでから、緑青と硫酸銅を混ぜた液を熱した中に宙吊りにして煮込み着色しました。屋根はその後、銀古び液とヨードチンキでイブしてから研ぎますと、鳥の足跡がクッキリと浮かび上がります。上チョーカー用の革紐を通し金具を付けて完成した巣箱1号と屋根の模様。下は同時並行的に製作した巣箱2号との記念撮影。

巣箱の製作工程のうち、おそらく6割がたは研磨のためのヤスリ掛けで、残りは温度の違うロウ付け作業とその準備ではないでしょうか。そういう意味では金属加工の基本技術をマスターするためには格好の題材だと思われます。(April15/2005)

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