ウロウロ日記(5):師匠-4


久方ぶりの師匠シリーズだ。Mr.Uは若い。

少なくとも自分よりは20歳年下だから、まだ40歳にならぬのかぁ・・・思えば不思議な出会いであった。

とある碁会所へ師匠がふらりと現れたのである。

それまでは見た事のない人だ。

一局打ちませんか?と問われて断るほど謙虚でない銀次郎、得たりや、オウ!と受けて立ったのはモチのロンでげす。

手合いは?と自分が問えば、”それでは3子で・・・”と応える。

知らぬが仏とはこのことであった。

俺ほどの剛の者に3子を敷かせても負けないという自信はいずこから湧くものか!なんちゅう、生意気な態度であるか!

銀次郎の目が血走る・・・後で考えれば小生のラフな囲碁をこっそり見ていたに違いない。

第一手は師匠の右下隅小目。

銀次郎ハッシと一間に高く掛かった。

師匠、受けず小生の右下へ小目に掛かる。

なんちゅうこっちゃ!銀次郎の一間を受けぬとは!!

ヨーシ、地など与えるものか!と左上隅の小目へ内側からツケた。

今度は隅からハネて受けた。

まあ、良いか、仕方あるまいと思っていた。こちらもツケた石から引いた。

師匠、カケついで受ける。

で、銀次郎オオゲイマに左辺へ開いた。

次に上辺に2間に受けさせて、右下へ掛かってきた石を2間にハサんで打てば良いとみていた。

ところが、左上隅を2間に受けずに、手抜きして右下隅を両掛かりしてくるではないか!

なんちゅう態度や!

俺ほどの剛の者がオオゲイマで左辺へ開いているのに手抜きするとは許せん!

カケツイだ石の肩へ怒気も鋭くカケた。

どうぢゃ!参ったか!

俺ほどの剛の者の打った手に挨拶せぬから、こういう阿鼻叫喚の巷と化すのぢゃ!

肩で荒い息をしながら、師匠を睨み付けると・・・

はて?みたいな顔をして、平気で肩ツキ石の右側へペタリと静かに白石を置くではないか?!

 そ、そんな手があるのか!こりゃツオイゾ〜と思ったし、頭に血が上った。

ゴタゴタやられているうちにここを先手で切り上げられ、右下隅を外から封鎖されてしまった。

これは3−3に打って生きるしかない。

こうなると訳が判らなくなるのが銀次郎だ。

思慮の乱れるに従って打っていると次第に昨今のNHKの経営陣みたいに石の人相が悪くなって行った。

さあ、そうなるとそんな石に楽をさせてはくれるような師匠ではない。

真綿で首を絞めるというのはかくばかりか・・・緩そうな手なのだが、実は一番厳しい手で迫られる。

俺ほどの剛の者の石が、もうどうしようもない姿になっていくではないか?

酷い目に遭わされて、最初の3子局は完敗に終わった。

俺ほどの剛の者に3子置かせて、なぶり殺しにするとは・・・

それ以降、何回打っても3子の壁が破れず、それ以来、師匠として君臨して憚らないのである。

U師匠は何でも神様のお告げに従って行動することにしているそうだ。

この碁会所へ来たのもそのお告げだとのこと。

さすれば、銀次郎と出会うことも神様の思慮にあったということだろうか?

U師匠とは今は遠く離れてしまっているが、語録とでも言うべき言葉を残していってくれた。

一つ、囲碁を打つに当たっては謙虚であるべし。

勝ったのは偶然と思え。負けたのは相手が強く、自分が弱かったという必然の帰着と思え。

一つ、NHKの経営陣のごとき人相の悪い石は如何に上手に捨てるか?という視点で打ち進めよ。

一つ、二線のヨセを大切に考えよ。

などなど・・・

U師匠が囲碁を覚えたのはテレビを見てだそうで、初めて人間と碁を打ったときはすでに2段くらいだったと言う。それから大学囲碁部へ入り2年くらいで6段になったそうだ。

プロが言うには立派なアマチュア6段はプロの連中と考えることは殆ど変わらないと言う。

アマチュアの5段までなら、誰でもなれるが、6段にはなかなかなれない。

囲碁の才能が必要だし、大変な努力が欠かせないのだそうだ。

そういうものに数年で達するんだから師匠に値すると言わざるを得ないのだ。

碁というゲームに上達するのは、なかなか大変だが、人生でプロレベルになるのは、さらに至難の業だし、まったく異なる才能と努力が要るはずだ

人生のプロに数年で達する人っているのだろうか?お釈迦様と拝大五郎くらいかなぁ・・・小生が知っている人生のプロに若くして達したのは。

December 20/2004


   
 

Tidbitトップへ

  HOME   NEXT
   
inserted by FC2 system