-真空管アンプ;その1-


最近、昭和ブームなんだとか。なんでも、昭和という時代を懐かしむ人々が増えているそうだが、これは今の世の中が悪すぎるからなんだろうね。だって、昭和なんてそんなに良い時代だったとは思えないもの。

それはそうとして、かつてはオーディオと言えば、昭和の20年代ころは電蓄と称して、モーターで回転するターンテーブル(その前は、ほれ、ビクターのコマーシャルで犬が耳を傾けてるゼンマイし掛けのものだった)に簡単なピックアップをつけて、ラジオ程度の増幅回路でスピーカーを鳴らしていた。自分の10歳くらい年上の兄弟が欲しがっていたのは、きっとこういったたものだっただろう。

時代が進んで、LPレコードが流行ってくるとともに、電蓄もステレオ化が図られるようになり、ターンテーブルもクオーツロックだとかなんだとか言って、回転数の安定化やワウフラッタといった回転ムラの低減化が進むとともに、メーカー連中はここぞとばかりに新製品でユーザをあおったものである。昭和40年代の始め頃ではなかろうか?

普通の人々は、総合ステレオ装置とでも言うのか、1つのメーカが音の入り口から出口まで全てそろえて売り出していた製品を買い込んで、LPレコードを聴いたり、好きな人でもステレオ・テープレコーダを追加購入して、録音済みのテープを聴いたりしていたのだと思う。

しかし、いつの時代でも、どの分野にでもマニアと言われる人種がいるもので、そうした総合製品には飽き足らず、いわゆるコンポーネント・ステレオへの道を突き進む人たちが少なからず、存在していた。もともとはラジオなんかを自作していた連中だと思う。アマチュア無線を趣味にする人たちもこうした技術には通暁していたものの、無線が好きな連中はえてして、オーディオには手を出さなかったようだ。

オーディオの世界は非常に主観的な価値判断が横行するが、アマチュア無線の世界は仲間同士の交信という絶対的な目標があって、この点で行き方が違う。

さて、こういう主観的かつ、情緒的な趣味の世界では時として理論とは無縁の価値観の違いから生ずる趣向のようなものが誕生するチャンスがある。真空管アンプあるいは管球式アンプと言われる増幅器もそれである。文字通り、入り口から入ってきた音に力をつけて、出口に繋がるスピーカーを振動させて疎密波としての音を再現するための装置である。

簡単に言うと真空管の中にはヒーターと言って電子を放出するための1対の配線と、ヒーターから吐き出された電子を吸い寄せるために高い電圧をキープしたプレートと言われる電極、それに電子の吸い寄せられ方を音の強弱によって変化させるためのグリッドという電極がある。真空の中をプレートに向かって、突き進む電子の流れによって表現される音楽に対応して発生するプレート負荷抵抗両端の電圧の変化・・・それだけの話なんである。


   
 

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