マツタケ


知人から、電話があった。

なんぢゃらほい?と出てみると・・・・

四国の山の中でマツタケを採ったから持ってきてくれる!と。

思わず、耳を疑った。

四国のですよ、私が住んでいるところの地続きで、

マツタケが採れるなんて。

しかも、それを頂いて食べられるなんて、

なんちゅうことだろうか!

やがて、爆音凄まじく、知人が到着。

マツタケ音頭が鳴り響くぞ〜。

ティッシュ・ペーパーの中に鎮座まします美麗なマツタケが

ズシリっ!と私の手に渡って来た時の感激ったら

なかったなぁ。

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このチョコレート色した、肌合いとしっとり、ずしりの重さ。

馥郁と香るまごうことなき、マツタケの実在感。

尺アマゴを掴んだときにも増す感動がある。

国産の採れたてマツタケを食べるなんて、

おそらく50年ぶりではないだろうか?

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昔は日本各地で、季節が来るウンカのようにとマツタケが出てた。

だから値段も安かったし、庶民の口にも入っていた。

幼い頃、そこいらじゅうにマツタケが生えている場所へ行って

開いたカサばかりちぎって取った思い出がある。

すき焼きと言えば大抵、マツタケが入っていた時代だった。

あれは4歳の頃、もう60年も前ではあるが・・・

なんせ、生い立ちからして、うれしい四国産だ。

何の料理にしようかと、頭がグルグル回りをしてしまう。

澄まし汁には足の方を5cmばかり切り取って入れた。

酢橘の皮を小さく切って入れたら秋の味覚が引き立つ

カメラ の奴も、感激してなみだ目になってしまったみたいだ。

というのは嘘で、湯気でレンズが曇ったのだ。

かつてのすき焼き風にして味わう。うま〜い!!

こりこりした食感と独特の香りがたまらん!

もったいないから、なるべく薄く切りたいのだが、あんまり薄くして

本来の味覚が損なわれてもいかん!

もったいなさと、味覚維持のぎりぎりの折り合いがこの厚さだ。

まぁ、なんともいえん。採れた場所、新鮮さに加えて、

知人の苦労と、気持ちがジ〜ンと胸に沁みる秋の夜だった。

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この数十年、国産木材市場の低迷から、山の管理が放棄されて

マツタケが出なくなってしまった日本の山。

マツタケはデリケートなキノコで、

手入れのされてない松山では育たない。

今では、痩せ尾根の険しい場所に極僅かひっそりと

暮らしているらしい。

従って、そんなマツタケを探すには

厳しい山の斜面を這い登り、幸運にも

見つかればよいが、それでも帰路は

とてつもなく危険な道なき斜面を再び下らなければ

ならず、ある意味源流の釣りにも似た苦難を

伴うのだそうだ。

オフ・シーズンの渓流釣りのためのトレーニング

と考えれば良いのかもしれないが、それでは

一年中命がけのエクササイズを続けることになる。

現代のマツタケ狩は、キツイ山の斜面を登り降り

することの達成感だけが、いきがいのような、

ストイックな狩猟行為なのかもしれない。

そこまでして、どうしてマツタケなのか?私にもわかりません。


日本人の頭のなかには、かつての夢が住み着いていて

もう一度と思うのかもしれません。悲しい性といえば、それまでの話なのかなぁ〜。

だからこそ、貰った一本のマツタケは美味かったです。

本当にありがとうございました。


2008年10月13日 月曜日

 

 

   
 

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